あなたとご家族のための意思表示「ACP」について考えましょう
皆様、こんにちは、里村医院 副院長 里村 元です。
本日のブログは「ACP」についてです。
ACPと聞いて、何の略称がお分かりになる方はどのくらいいらっしゃるでしょうか?
一般の方はもちろん、医療関係者の中でも
ご存知ない方も多いACPについてお話させていただこうと思います。
ACPは
「アドバンス・ケア・プランニング
(Advance Care Planning)」の略称で、
日本医師会の定義によると「将来の変化に備え、将来の医療およびケアについて、
本人を主体に、そのご家族や近しい人、医療・ケアチームが、繰り返し話し合いを行い、
本人による意思決定を支援するプロセス」のことです。
定義をすると難しくなるので、私なりに簡単に言い直すと、
「年齢を重ねていって、
人生の最期をどのように迎えたいかを、
医師や介護職のサポートを受けながら、
自分の意思を家族含めた周囲に事前に伝えておく」
となります(これでも難しいと思った方、すいません)。
人は必ずいつかは死にます。これは避けられない事実です。
この避けられない事実から目を背けずにいかに自分らしい最期、尊厳をもった終末期を過ごすことができるかを自分の意思がしっかりしているときに話し合いを持つことが大事だと思います。
「自分や家族の最期を考えるなんて、縁起でもない!」
「考えているけど、その時になってみないとわからない」
「自分らしい尊厳ある最期ってどういうこと?」
など、様々なご意見あると思います。
当然だと思います、人は経験したことがないことを考えることが難しいからです。
そこで、役に立つのが埼玉県医師会が発行した
「私の意思表示ノート」です。
ここには、現代の医療では回復の見込みがなく
「まもなく死が訪れる」時の治療に関して1つ1つ「希望する・希望しない」を
具体的に意思表示することが出来るようになっています。
しかもそのページが複数枚あり、気持ちの変化が出てもその都度更新できるようになっています。
加えて取っつきにくい医学用語の解説も載っているので、
医師から説明されて分かりにくい用語の理解にも役立ちます。
私は大宮医師会の中で、
ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の普及啓発医師の1人になっており、
地域住民の方に向けてACPについて講演もさせていただいています。
また、12月12日には大宮医師会などが主催となり、
「医療・介護つながりの会」という勉強会で、
ACPについての活動報告と普及についての話し合いを行ってきました。
そこで私が提案した内容に関して、1つ記載したいと思います。
いざ、自分または家族の最期が近いとなったときに、
医師は「延命治療はどうしますか?」と質問します。
その際に事前にACPをしていれば意思表示をすることができますが、
残念ながらそのような方は多くありません、延命治療をどうしますか?と聞かれても、
具体的に何を延命治療と呼んでいるのか、
また延命治療を行った場合と行わなかった場合の違いは何かということを
理解されている方がとても少ないのです。
例えば、自分で呼吸が出来なくなった場合、気管にチューブを入れ、
人工呼吸器に繋ぐ気管内挿管を行います。機械に装着すると自分の声が出せなくなりますし、
口に管が入っている状態をご家族が見て「かわいそうだから外してください」と言われても、
それを外すことは犯罪行為になってしまうので、出来ません。
気管内挿管をして救命できる事が理想ですが、高齢者に気管内挿管を行っても、
残念ながら多くの方が回復することが少ないのが現状です。
そういったことまでしっかりと説明を行い、
そのうえで「延命治療を行いますか?」と問う必要があると私は思っています。
そのためには1回の説明では理解できない方がほとんどであり、
何度も繰り返し説明を行っていく必要があると思っています。
そこまでできて初めて、必ず訪れる最期を自分の意思が
しっかりと反映できることに繋がってくると思います。
そこまで出来るようにこれからも活動していきたいと思います。
「私の意思表示ノート」が欲しい方がいらっしゃいましたら、
里村医院に部数が多くありますので、お声掛けください。
「私の意思表示ノート」を、
自分のご家族と話し合いを持つツールに
使っていただいたらよいかと思います。