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慢性腎臓病
症状と治療法について解説
慢性腎臓病とは

「慢性腎臓病」は、自覚症状がないまま腎臓の機能が低下している状態、または蛋白尿などの検尿異常が3か月以上続くことで、慢性に腎機能が低下するすべての腎臓病のことを指します。
慢性腎臓病になりやすい人の特徴
以下のような人が腎臓病になりやすい可能性があります。
- 高齢者
- 喫煙者
- 肥満(メタボリックシンドローム)
- 腎臓病の既往がある家族がいる
- 痛み止め(NSAIDs)を長期で内服している
- 腎障害を起こしたことがある
- 尿路結石
- 便秘傾向
- 糖尿病、高血圧、脂質異常症(高脂血症)などの生活習慣病の症状がある方
腎臓が原因となる病気のほか、上記症状や加齢、喫煙、心臓病、貧血、睡眠不足、歯周病、便秘、遺伝など様々な原因によって、腎機能の低下が引き起こされます。
日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2024」によると、慢性腎臓病(CKD)の推定患者数は約2.000万人 (*1) であり、これは成人の5人に1人に当たる数と報告しています。
(*1) 日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2024」

里村医院では総合内科専門医が幅広い知識で総合的な治療を行うことができます。 また管理栄養士も在籍し、適切な食事のアドバイスも可能であり、腹部超音波検査で腎臓の形態的な異常も確認することができます。ネット予約いただくと待ち時間なく診察を受けられますのでぜひご予約ください。
慢性腎臓病を放っておくと
腎臓は尿を産生する臓器ですが、それ以外にも体内で様々な働きをしています。
腎機能が悪くなると体の様々なところに影響が及びます。尿として老廃物を出せないことで体内に毒素が溜まるほか、貧血や骨をもろくしたり、心血管疾患の発病リスクを高めたりするなど、命に関わる危険な状態を招く恐れがあります。

また、腎臓は一度悪くなると、回復が見込めないケースがほとんどという点も忘れてはいけません。著しく機能が低下した場合には、生きるために人工透析などの腎代替療法が必要となります。そのためにも、腎臓病の「早期発見・早期治療」が重要です。
慢性腎臓病の症状
慢性腎臓病の定義・診断基準
日本腎臓学会では、慢性腎臓病の定義を下記のいずれか、
または両方が慢性的(3か月以上)続いている場合と定めています。
- 腎障害の指標:蛋白尿、尿沈渣の異常、電解質の異常、
病理組織による異常、画像検査による異常、腎移植の既往 - 腎機能を評価する「糸球体ろ過量(GFR値)」が<60mL/分/1.73 m 2
日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2024」P6より
腎臓の働きが悪くなっても、初期段階では自覚症状は現れません。腎機能がある程度低下すると、次のような症状が現れるようになります。

むくみ(浮腫)
・特に足や顔にむくみが現れる
・腎臓が水分を十分に排出できなくなるため尿の異常
・泡立ちの多い尿(蛋白尿の可能性)
・尿の色の変化(茶色や赤色:血尿の可能性)
・排尿回数や量の変化(頻尿や夜間尿)疲労感
老廃物が排出されなくなり、だるさを感じることがある息切れ
体内の水分貯留が多くなり少し動いただけでも息切れする集中力の低下
老廃物の蓄積により集中力の低下などの不調を感じることがある貧血
赤血球を作るホルモンが減ってしまうので、立ちくらみや貧血が起こりやすくなる骨が脆くなる
骨とミネラルのバランスがくずれ骨折しやすくなったり、電解質異常が起きることがある
このような症状があれば慢性腎臓病の可能性があります。病院に受診し専門的な検査を受けることをお勧めします。当院では血液検査や尿検査、腹部超音波検査で腎臓の異常を早期発見する取り組みを行っています。

慢性腎臓病の原因となる疾患
高血圧性腎硬化症
高血圧によって、腎臓の血管に動脈硬化を引き起こし、血流が悪くなることで、糸球体が次第に硬化していき、腎機能が低下します。
高血圧性腎硬化症は末期になるまで症状が乏しいのが特徴です。日本では透析導入になる原因として最近増加しています。 高血圧性腎硬化症は腎機能低下とともに心筋梗塞や心不全などの心血管疾患の発症も増えることが分かっており、 心血管疾患を発症させないためにも高血圧性腎硬化症の早期の発見は重要です。
糖尿病関連腎臓病
糖尿病関連腎臓病は慢性腎臓病のなかで重要かつ最大の原因の疾患です。 糖尿病関連腎臓病を悪化させないために、原因疾患の糖尿病の血糖コントロールを適切に行うことが重要です。 そのためには投薬治療に加えてライフスタイル(食事療法、運動療法、禁煙指導)の管理も重要です。
当院では食事指導の管理として管理栄養士も在籍しておりますので、バランスのよい食事管理を提案することができます。
慢性腎臓病の診断方法

慢性腎臓病は原因疾患、腎機能障害の程度、蛋白尿の程度を組み合わせてステージ分類を行っています。 当院では総合内科専門医が必要に応じて検査(血液検査、尿検査、超音波検査など)を行い、重症度を分類し、適切な治療を行います。
尿検査
尿検査には試験紙法または尿沈渣があり、血尿・蛋白尿・尿糖・比重、pHなど様々な異常を発見できます。それぞれの項目もちろん重要ですが、慢性腎臓病の早期発見に重要なのは血尿・蛋白尿です。さらにその中でも重要視されるのは蛋白尿です。その理由は二つあります。一つ目は血尿は腎臓以外の異常(尿管や膀胱など)でも起こりうること、二つ目は蛋白尿そのものが腎臓の組織に障害を与えて、腎臓の働きを低下させることがわかってきたからです。血液検査
腎臓の評価をするうえでクレアチニンがとても大切です。クレアチニンは毎日筋肉で作られる老廃物です。腎機能が正常な場合には、すべてが尿中に排泄されて体の中にたまることはありませんが、腎臓の働きが低下すると、尿に十分排泄できなくなって、体の中に徐々にたまります。正常値は性別、年齢で多少の変動はしますが、概ね1.0mg/dl以下です。超音波検査
腎臓の形態的異常を超音波検査で確認します。慢性腎臓病になると腎臓は薄くなります。また先天性の異常があったり、家族のなかで腎障害がある方は遺伝性の腎疾患を発症していることがあり、超音波検査で確認することがとても重要です
腎臓病の治療法

腎臓病の治療法は、主に以下のものがあります。
生活習慣の改善
生活習慣の改善方法は、食事療法を中心に行い、適度な運動の実施、疲れを溜めない、感染症を予防する、体の冷えに注意する、嗜好品の摂取をほどほどにするようにしましょう。
慢性腎臓病の治療は病気の進行を防いで、少しでも人工透析療法への移行を遅らせることや心血管疾患などの合併症の予防を目的としています。
食事療法

食事療法の制限の程度は、慢性腎臓病の原因となっている病気や合併症の有無、年齢によって異なります。当院では、管理栄養士による栄養アドバイスを行っております。お気軽にご相談ください。
1.塩分を減らす
塩分を多く摂ると喉が渇き、水分を多く取ることで体がむくみ、血圧が上がります。高血圧になると腎臓のろ過機能が低下し、老廃物や水分を排出しにくくなり、さらに血圧が上がる悪循環に陥ります。減塩を意識することで、この悪循環を防ぐことができるため、減塩はとても大切です。2.蛋白質を減らす
腎臓のろ過機能が低下すると蛋白尿が出て、腎臓の働きをさらに悪化させます。そのため、慢性腎臓病の進行を防ぐには、蛋白尿を減らすことが重要です。
対策として、たんぱく質の摂取制限や、蛋白尿を減らす効果のある降圧剤を使い、血圧を130/80mmHg未満に保ちます。ただし、たんぱく質の摂取量は年齢や病期によって異なるため、医師や管理栄養士に相談することが大切です。
3.カリウムを減らす
カリウムは血圧や酸塩基バランスを調整する重要な電解質です。摂取したカリウムの90%は腎臓から排出されますが、腎機能が低下すると排出が滞り、血中濃度が上昇します。これが「高カリウム血症」となり、重症化すると致命的な不整脈を引き起こすことがあります。
薬物療法
慢性腎臓病を治す(根治する)内服薬はありません。
ですが、慢性腎臓病の悪化を予防したり、慢性腎臓病による合併症を起こさせないようにすることは可能です。
また生活に支障が生じる人工透析にならないようにすることが重要です。
降圧剤
アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬/アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)(RAS阻害薬)
慢性腎臓病によって蛋白尿が陽性の方は第一選択薬になります。血圧を下げて腎臓を保護する作用があります。
RAS阻害薬(ACE阻害薬、ARB)はすべてのCKDステージで投薬できますが、CKDステージG4・G5・高齢者の場合には投薬開始時に腎機能の悪化や高カリウム血症が起こる可能性もあるので、少量から開始します。SGLT2阻害薬
慢性腎臓病に糖尿病が合併している場合は、腎機能低下の予防や心血管疾患の発生を抑えることが示されているSGLT2阻害薬(エンパグリフロジンR、ダパグリフロジンR、カナグリフロジンR)が第一選択薬になります。蛋白尿(アルブミン尿)が多い方ほど有効性が高いことが分かっています。非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)
RAS阻害薬が投与されても、アルブミン尿が改善しない場合、血清カリウム値が正常の場合、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬を投与します(ケレンディアR、ミネブロR)。ケレンディアRは2型糖尿病合併慢性腎臓病、ミネブロRは高血圧症に投与
腎性貧血治療薬(ESA製剤、HIF-PH阻害薬)
血液は、腎臓から分泌されるホルモン(エリスロポエチン)の刺激で骨髄内の細胞が作ります。しかし、慢性腎臓病が進行するとホルモン分泌が低下し、血液が十分に作られず貧血(腎性貧血)になります。貧血が進むと倦怠感や心臓への負担が増し、腎機能の低下や心不全の悪化を招くこともあります。
腎性貧血の治療には、エリスロポエチンを補う注射薬(ESA製剤)や、産生を促す内服薬(HIF-PH阻害薬)を使用します。注射薬は1~2週間に1回投与し、安定すれば4週間に1回も可能です。内服薬は通常1日1回服用します。
CKD診療ガイド2024では、血中ヘモグロビン濃度を10~13g/dlに保つことが推奨されています。
里村医院の慢性腎臓病の治療
慢性腎臓病の治療には、食事療法・運動療法などの「生活習慣の改善」と、進行や合併症の予防、原因となる腎臓の病気の治療を目的とした「薬物治療」を併用します。必要に応じて専門医の紹介も行っております。
かかりつけ医としての重要な役割の一つが、慢性腎臓病の管理です。生活習慣の改善に加え、ステージに応じた食事療法や、血圧・血糖・脂質の総合的な管理が必要となります。健康診断の検尿で蛋白尿や血尿を指摘された方、ご家族に腎臓病の方がいてご心配な方など、お気軽に当院までご相談ください。

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