早期アルツハイマー型認知症の新薬「レカネマブ」
皆様、こんばんは、里村医院 副院長 里村 元です。
本日のブログのテーマは「レカネマブ」についてです。
レカネマブについて、最近のニュースで取り上げられているので
耳にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
レカネマブは、早期アルツハイマー型認知症を対象とした新薬のことで、
エーザイとアメリカの製薬会社バイオジェンが共同開発し、
アメリカでは2023年1月6日に迅速承認されました。
日本においても承認の調整を進めており、
今年中に承認を得たい考えがエーザイにはあるようです。
では、日本で承認された場合、実際にはどういった方に
治療することができるようになるのでしょうか。
効き方(作用機序)
- アルツハイマー型認知症の原因物質であるアミロイドβにくっつき(凝集し)、
アミロイドβを洗い流す(除去する)ことでアルツハイマー型認知症を発症させないようにする。
投与できる人(治療対象)
- アミロイドβが脳内に確認された方で、アルツハイマー型認知症による軽度認知障害(MCI due to AD)と軽度アルツハイマー型認知症が対象。
治療方法
- 2週間に一度、点滴投与?
(これに関してまだ詳細が決まっていないので、承認の根拠になった臨床試験の方法による)。
参考文献::N Engl J Med 2023;388:9-21(Clarity AD試験)
効果
- 治験によると投与した人を投与しない人と比べた時に
18か月後には認知機能症状の悪化を27%止めることができました。
参考文献::N Engl J Med 2023;388:9-21(Clarity AD試験)
問題点
- アミロイドβを脳内に確認すること:
アミロイドβを確認するためにはアミロイドPETという保険適応されていない高額な画像検査が必要。 - アミロイドβ関連画像異常(ARIA):
レカネマブを投与することで、脳浮腫や微小脳出血が発症する可能性がある - 高額:アメリカでは年間350万に設定、日本ではまだ未設定(年間100万円くらい?)。
以上がレカネマブの特徴になります。
保険適応になっていない画像検査を行う必要があったり、思わぬ副作用が起きるなどといった問題点はありますが、早期アルツハイマー型認知症の段階で治療が出来ることは、今までは認知症の進行を緩やかにする治療が中心だった認知症診療にとって画期的なことであり、今後の高齢化社会になっていく中で認知症の問題を解決する1つになる可能性は大いにあると期待しています。
予防医療を掲げている里村医院として、認知症の症状が発症する前の段階で治療介入ができることは理念に合致しますので、レカネマブに関して引き続き注視していこうと思います。
続報がでたら適宜発信していこうと思いますので、皆様どうか楽しみにしていてください。