徒然想 第十二回
令和5年6月27日
大富豪家の旅行は、我々には、その真意が良く分からない事が多い。
昨年12月、日本の民間人として、初めて国際宇宙ステーションに滞在し、
地球に帰還した富豪家がいた。
超高額な「100億円の宇宙旅行であった。」
彼の感想のまとめは「地球を大事にしようと思った。」と、述べているが、
100億円をかけないと、気づけないものなのだろうか。
宇宙から地球を眺めて、地球温暖化の様子が分かるのだろうか。
むしろ、ロケット燃料でCO2を大量に排出し、
宇宙ゴミを増やして帰還したというのが実情ではないだろうか。
1912年4月、イギリスの豪華客船タイタニックが、
処女航海中に氷山に衝突して沈没した。20世紀最大の海難事故は余りにも有名である。
犠牲者は、乗員乗客合わせて、1,500人を超える。生還者は710人であった。
タイタニックとその事故は、しばしば映画化されるなどして、世界的にその名を知られている。
先日、この沈没して海底に眠るタイタニックの残骸を見るツアー中に
行方不明になった潜水艇(タイタン)が話題になった。酸素切れで5名の命が失われた。
そもそも、この潜水艇には、開発の時点から、業界の基準を満たしていないとの批判があった。
この開発を「実験的な手法」として、事故の危険性を指摘していた。
4,000メートルの海底に沈むタイタニックに対し、1,300メートルまでしか安全性が担保されていないとその危険性を指摘していた従業員が解雇されたという報道もあった。
又、新聞の報道に対しても、不謹慎に感じたことがある。
当初、潜水艇のツアーの表現に対して「観光ツアー」と題していた。
犠牲者に対して「観光」は適切な表現とは思えない。
その後の報道は「見学ツアー」に言い換え、更に「探索ツアー」と変化していった。
ところで、沈没する船では、我先に救命ボートに乗り移る乗客で
混乱を招くことは、容易に想像がつく。
乗務員が、救命ボートに、女子・子供を優先的に誘導する「説得」に、
各国の国民性を表現した「たとえ話」がある。
アメリカ人に対しては「女子・子供を優先したなら、帰国して、英雄になれますよ。」
イタリア人には「生涯、女性にもてますよ。」
ドイツ人であれば「規則でそのように決まっています。」
イギリス人に対しては「紳士として尊敬されますよ。」
それでは、日本人であれば、なんと説得したであろう。
「皆さん、そのようにされていますよ。」だそうである。
日本人は、あまり主義主張を持たない国民と取られているようである。
ロシア人であれば「領土を分けてあげますよ。」と説得するのであろうか。
我々庶民には、とうてい手の届かない旅行であるが、
行けるとしたら、宇宙旅行と潜水旅行のどちらを選ぶのであろう。
里村 盟